日下公人『日下公人が読む 日本と世界はこうなる』
この著者にはいつも感心させられます。著者によれば、250年続いた近代化の時代が終わって、次に来るのはポストモダンの時代ですが、それはかつて日本が達成していた価値観が再び有効になる時代でもあるようです。日本の文化の重層性には侮れない貴重なものがあるので、少し落ち着いて考えると未来へのヒントはすでに自分たちの文化の中にあるということです。
とはいえ、インテリや官僚は外国崇拝でダメです。普通の人びとの生き方の中に今も根付いている伝統を掘り起こす必要があるのです。
この点で著者のインテリ嫌いは徹底しています。私も年とともにあつかましくなり、この頃はインテリからは何を言われてもまったくこたえなくなりましたが、それも著者のような人たちに勇気づけられてのことです。
著者は近代化の「二百五十年前から続いている古い考えに、ばかに自信を持っている人がいるのは困る。古い本からの試験に通った人はみな少しおかしい。落ちた人のほうが偉い。受けない人はもっと偉い、と私は自信を持つようになるまで五十年かかった。自信をつけるのは大変だった」(159-160頁)と述べています。
なるほど著者にしても自分を偉いと思っているバカとの戦いは、かなり大変なことだったのですね。でも、自分の頭と言葉で考えることができる人は結局強いのです。
本書でなるほどと思ったことの一つに、アメリカは古代の上に近代を継ぎ足したような珍しい国だという考えがあります。ヨーロッパの食いつめ者が作ったアメリカはまずは食べることが第一で、ヨーロッパのように感性の基礎となるべき中世がないので、モデルをいきなり古代ギリシャに求めたということです。そういえば連邦政府の主要な建物はみんなギリシャ様式の柱が正面に並んでいます。あれってコンプレックスだったんだ。
それで、ギリシャの奴隷制も引き継いだというわけですね。こういう発想は本当に勉強になります。比較文化論の授業で早速紹介したいと思います。
(ワック2009年1238円+税)
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