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2010年1月25日 (月)

クリス・アンダーソン『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』

 タダほど高い物はないという言葉がありますが、タダの魅力には抗し難いものがあります。ハーシーの安物のキスチョコがタダで貰える場合は、消費者はスイスのリンツの高級チョコが一粒15セントでも買わないそうです。
 この魔力を持つ「タダ」の周りでお金を儲ける方法を見つけ出した人が成功を収めるという本です。実例はグーグルです。なるほどグーグルはこうして儲けていたのかということがちょっとわかってきました。
 音楽CDなんかは海賊版を認めるだけでなくて、むしろ積極的にタダにして配ってしまったほうが、コンサートの観客数は伸びるそうです。CD制作会社は儲からなくてもイベント業者は笑いが止まりません。無料を余儀なくされたCDは今日では宣伝活動と割り切るしかないようです。
 面白いのは、海賊版が出回るほど生演奏のステージの価値があがるというところで、結局人びとは何に価値があるのかということは理解しているようです。この感覚はわかる気がします。かつて忌野清志郎のコンサートに3回ほど足を運びましたが、その時のステージの印象にはどんなCDを聴いても得られないものがありました。尾崎豊のコンサートなんか行っておきたかったなあ。亡くなってからその良さに気がついていては手遅れですが。
 人びとの好みが本物志向になるのなら、複製芸術が無料になるのは―複製技術がコストゼロに近づく以上―道理にかなっています。それはそれで認めていかないといけないでしょう。
 こういう本を読むと、いつも大学経営にどのように応用できるかということを考えないわけには行かないのですが、事態はすでにかなり進んでいて、カリフォルニア大バークレー校では看板教授の講義がユーチューブで公開されています。
 そこで実際にその教授から手取り足取り直接指導を受けてみたい人が大学の門を叩くというのが狙いだそうです。私の勤め先の通信教育部でもなにかフリーのコンテンツを考える必要がありそうです。すでに自前の教科書をフリーにする大学は出てきています。科目履修生の学費を1科目までならタダにするというのもいいかもしれません。
 いずれにしても読者のビジネスマインドを大いに刺激してくれる本です。

(小林弘人監修・解説、高橋則明訳、NHK出版2009年、1,800円+税)

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