荒川洋治『黙読の山』
著者のエッセイ集が出るたびに読むようにしていますが、本書はいつの間にか入手し忘れていたため、あらためて注文しました。
いつも通り心と体に染みわたる文章です。このそこはかとなく柔らかい語り口が大好きです。
内容は本についてのエッセーがほとんどで、著者の紹介をきっかけに新たな作家の本を読むようになることも、また新たな楽しみです。
本書で紹介されていたガルシン『紅い花』、加能作次郎『世の中へ・乳の匂い』、見順『いやな感じ』、渡辺京二『逝きし世の面影』、ブッツァーティ『神を見た犬』、ラープチャルンサップ『観光』については、どれもすこぶる面白そうなので、近い将来必ず読むつもりです。手帳に書きとめておきました。こうしてここにも書いておきましたから、忘れないでしょう。この本のタイトルや作家名を検索にかければ瞬時に出てくるのがブログのいいところです。
それにしても、著者のように本当に文学が好きで、作家や作品の話ならいつまでも語ってくれそうなタイプの人というのは最近は稀少生物のようになってきているのではないかという気がします。学生時代にはそんな友達がそれなりにいましたが、今の学生たちはどうなんでしょう。
思えば私の職場でも文学好きはほとんど見かけませんが、まあ、大学の先生というのは仮に文学研究者でも、字句にこだわるのが関の山で、ハナから期待はしていません。どうかすると作品自体に何の関心も持たないといったタイプも珍しくありませんし。
しかし、ふつうの趣味人とか愛好家といったタイプの人は、気がついたら長らくお目にかかることがなくなっています。最近読んだこれこれの小説は面白かったよという会話がないのです。
みんなお仕事が忙しすぎるのでしょう。たとえお勉強はよくされていても余裕がない感じです。残念ながらその手の人は魅力的とはいえませんね。
来月は出張ついでに旧友に会って、久々に文学の話をしてくるつもりです。
(みすず書房2007年2400円+税)

