橋爪大三郎『民主主義は人類が生み出した最高の政治制度である』
タイトルだけを見るとえらくストレートにおバカな民主主義礼賛のようですが、標題となった章のタイトルには「陳腐で凡庸で過酷で抑圧的な」という枕詞がついていますし、よく見ると、カバーにも小さな字で記載されています。
本書が出た当時は、そのへんの含みにまったく気がつかず、書店で平積みになっているのを見て、このタイトルゆえに敬遠した記憶があります。福田恆存ファンの友人が「けっ」てな感じで語っていたこともあって、私もそのまま読まずじまいになっていました。今思うに当時その友人も本書を実際に読んでいたわけではなかったようです。
その後著者の他の本にも親しむようになって、古書店で見かけた本書を手に取ってみて初めて、これは要するに「されど民主主義」ということだったのかと悟った次第です。われながらバカでしたね。
著者の他の本と同様、本書にも著者らしい鋭い指摘がたくさんあり、勉強になりました。特に、民主主義については「民主化運動によってゆさぶられないという意味で、民主主義は安定している」(115頁)という指摘に感心させられました。プラトンやアリストテレスもこのような指摘はしていなかったような気がします。
そのほか、清教徒革命当時に形成された軍隊の仕組みがシビリアンコントロールの原型だということも教えられました。軍隊内部の上下関係と、市民社会の対等な関係がブレンドされているわけですね。
また、アメリカが何かとイスラエルの政策を支持するのは、どちらも宗教的人造国家だという共通点があるからだという指摘も面白かったです。「イスラエルは中東におけるミニ・アメリカである」(88頁)ため、イスラエルの建国が否定されると、アメリカ建国の正統性も揺らいでしまうからというわけです。
いろいろ勉強になりました。折に触れて読み返すつもりです。
(現代書館1992年2060円)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント