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2010年2月 3日 (水)

横山宏章『中国の異民族支配』

 現代中国の国家としてのアイデンティティーは清朝の支配下から独立しつつ、清朝の版図はそっくりいただくという方向で確立されたため、五族共和と華夷之辨(漢族支配の原理)に基づいて、異民族を「中華民族」へと同化する政策がとられてきました。本書はそのあたりの事情をきっちりと文献に即して解き明かしています。正確な基礎知識が得られてありがたい本です。
 それにしても、五族のうち漢族に指導され支配される側の4族すなわちチベット、モンゴル、満州、東トルキスタンおよびそれ以外の少数民族はたまったもんじゃありません。伝統の仏教美術を略奪されてそれを中国のものとして美術展が開かれているのを見ると、チベット人でなくても血圧が上がることでしょう。マスコミは報道しませんけど。
 しかし、昨年の日本での五輪聖火リレーも北京政府の指令で日本中から中国人留学生が動員されていました。うちのような田舎の大学でも留学生の多くが長野に集結したようです。現地でチベット人に暴行をはたらかなかったことを祈っています。
 政治的自由のない国と付き合うのは難しいことです。実際、日中両国の研究者が歴史を共同研究するなんていうのはそもそも無理です。先方の研究者が少しでも日本の肩をもつようなことを言うと、直ちにその地位を剥奪されるのですから。議論が中国国内で報道されないことを見てもよくわかります。
 研究者はその辺のことをわかって参加しているのでしょうか。マスコミも社会主義というものを甘く見ているのではないかと思います。イデオロギーや宗教が違っても、人は腹を割って話せば分かるとでも思っているのかもしれません。その考え自体が日本的な宗教なのでしょう。鳩山首相のように「いのち」を大切にする宗教でしょうか。

(集英社新書2009年720円+税)

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