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2010年3月 2日 (火)

渡部昇一『国、死に給うことなかれ』

 これは著者の近年の国内外の諸問題に対する見解がコンパクトに凝縮された本です。時には産経新聞でも遠慮するくらいはっきりした立場を取る著者ですが、論拠もはっきりと示されていて説得力があります。本多勝一や大江健三郎の姑息さが際立ちます。彼らとしては反論しようがないと思いますが、案の定沈黙を決め込んでいます。
 本書では第二次大戦の日本軍が官僚的になってどんどん弱くなっていく過程も描かれていて、このところ不振のスポーツ界と似ているような気もしてきました。オリンピックの役員なんか相当官僚化しているのでしょう。JOCの役員なんか年をとるにつれてどんどん人相が悪くなっている気がします。税金で大名旅行をして飲み食いすると、どこか後暗くてあんな顔になるんじゃないでしょうか。
 なお、本書で初めて知りましたが、第二次大戦の宣戦布告を前の晩飲みすぎてアメリカに渡しそこなった当時の在米大使館の奥村勝蔵一等書記官と井口貞夫参事官は、お二人とも戦後に外務事務次官に相次いで昇進しているそうです(125頁)。辻政信のような軍人の風上にも置けないクズの話は有名ですが、役人の世界も今と変わらずインチキだったのですね。
 著者はこうした国辱者のエリート官僚の名誉を「褫奪」することを提案しています。勲章なんか絶対に与えないというわけです。なるほど。実際にはできないとは思いますが、この発想は貴重です。しかし実際、当時すでに彼ら在米大使館のキャリア官僚は切腹するべきだという声があったと言いますから、まだ国家意識が健全だったのでしょう。
 また、重光葵氏の評価がきっちりとなされているのは良かったと思います。このところ白洲次郎がちょっとしたブームでしたが、勝るとも劣らない立派な人でした。今は何だか情けない政治家ばかりになってしまいました。気骨がなくなったら知性もいよいよダメになる感じがします。地元の選挙民からも「あんなに莫迦とは思わなかった」と言われているくらいですから、祖父のDNAなんてあったところで、あてにならないものです。
 本書ではあくまで噂としてですが、中国に行った政治家は1000万円単位で現金を渡されることがあるとのことです。そう言われてみると言動に思い当たる節のある政治家がちらほら出てくるような気がします。この間なんか幹事長を先頭にお手々つないで行ってきた議員連中がいましたよね。やっぱりたんまり貰ってきたんでしょうか。
 政治家もこちらから機密費をふんだんに使って闇世界ともども動かすくらいのことをしないと、国際政治の世界では太刀打ちできないのではないでしょうか。

(徳間書店2008年1600円+税)

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