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2010年3月10日 (水)

阿部泰隆『行政法解釈学Ⅰ 実質的法治国家を創造する変革の法理論』

 本書は専門の法律書ですが、およそ専門家らしからぬ駄洒落混じりのユニークな文体で、滅法面白い本でした。とにかく、今まで読んだ法律書の中で一番楽しめた本です。とりわけ行政法をかじったことがある人には是非お薦めしたい本ですが、門外漢がいきなり読んでも結構面白いかもしれません。それでも、できれば櫻井敬子の『行政法のエッセンス』や藤田宙靖『行政法入門』などを一読してから取り組まれると、面白さが倍増すると思います。
 今まで行政法という分野は独特の理論体系が初学者の理解を妨げていましたが、著者はそんなものを根本から取り払って、法治主義と憲法という近代法律学の原点から実践的に使える理論を構築しています。実際に著者が弁護士として数々の行政事件訴訟にも関わってこられた経験も生きているのでしょうけれど、これまでの行政法学を大胆に改革しようとしています。読んでいていささか心配になってくるほどです。
 その点では公務員試験には向かないと思いますが、新司法試験にはいいかもしれません。判例も実にたくさん収録されている上、それぞれが快刀乱麻を断つがごとく鮮やかに解説されています。法的思考力を鍛える上でも本書の右に出る本はありません。ただ、読むのに時間がかかることだけは覚悟した方がいいでしょう。私は1週間かけて読みました。まあ、司法試験受験生ならこれくらいはこなさないと合格は覚束ないと思います。
 しかし、最近の資格試験の受験生は何でも暗記に頼って勉強する傾向があるとも仄聞しています。司法試験くらいは考える力を試す試験であってほしいですが、どうなんでしょうね。すでに早くから国家公務員試験Ⅰ種の受験生が暗記だけで乗り切るタイプばかりだとは聞き及んでいます。実質が択一試験だけですから、これはかなり昔からそうだったようです。今の現職も実はとうにそうだったのかもしれません。そもそも創造力とは無縁の世界ですから、それでもいいのかもしれませんが、法律家もそうだとしたらえらいことです。

 それはともかく、同著者の第Ⅱ巻も昨年出たばかりなので近いうちに買って読みたいと思います。また、著者の他の本もこれから集めて読んでみるつもりです。

(有斐閣2008年4700円+税)

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