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2010年3月 6日 (土)

ライアル・ワトソン『思考する豚』

 小学生の頃、豚はきれい好きな生き物だという話を聞いたことがあります。しかし、小学校の通学路の近くにあった豚舎はいつも汚かったので、それじゃあ豚小屋の環境は気の毒だなあと思っていました。
 しかし、本書によると、どうやら豚はきれい好きなだけではなくて、犬猫やサル以上に賢い生き物のようです。ワトソンが飼ったことのある3種類の豚を含むの世界中の豚はいずれも「茶目っ気があり、社交性に富み、好奇心に溢れて」(321頁)いたそうです。
 ただ、私たち人間の方に、動物には意識というものがないという思い込みがあるために、コミュニケーションがうまく図れなくなっているというのが著者の主張です。
 実際、著者が最初に飼っていたイボイノシシのフーヴァーは人と常にコミュニケーションを取ろうとし、著者が遊んでくれないときは一人遊びをしたりして、実に愛らしくも賢いのです。著者は豚と付き合っていくうちに、彼らは言語に近いシンタックスを備えた鳴き声も持っているとさえ信じるようになりました。 ワトソンはさすがに生物学者だけあって、動物との意思疎通に巧みですから、話半分で聞くとしても、やはり当たっているような気がします。豚の方は人間をことさら差別せずにコミュニケートしようとしてくるというのが面白いと思います。
 要は世の中の生き物は全部つながっているということなのでしょうけれど、それにしても、先日読んだ象についての話もそうでしたが、豚の賢さはこれはこれでかなりのもののようです。これから動物園や農園に行く時は豚に注目して話しかけてみたいと思います。近い将来、飼い犬のように豚を連れて散歩する人が出てきても不思議ではありません。
 春風亭小朝が別れた奥さんから「金髪豚野郎」なんて罵られていましたが、豚にとっては迷惑な話です。しかし、これも豚のイメージが変わってくると、罵倒語ではなくなるかもしれません。金色の豚なんて、思えば何ともゴージャスな幸運を持ってきてくれそうです。

(福岡伸一訳木楽舎2009年2500円+税)

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