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2010年3月 8日 (月)

鷲田小彌太『新・学問のすすめ 超・情報化社会の知の活用術』

 著者の『大学教授になる方法』では「偏差値50でもやり方さえ間違わなければ誰でも大学教授になれる」というキャッチコピーでベストセラーになりましたが、読んでみると、共産党員が大学教員になるというコネの存在については書かれてませんでしたが、それ以外の中身は結構まともで、要は学問が社会に浸透し広く共有されることを願った本でした。
 本書のメッセージも同様で、学問をすることは幸福につながるということなのです。「学問こそが、人間の生きる喜びの基本をなす基本要素になった、というのがこの時代なのだ」(212頁)と著者は言います。民主的学問のすすめという感じでしょうか。
 1997年の本ですが、コンピュータの性能が当時からしても飛躍的に高くなっている以外、内容は古くなっていません。パソコンが文章製造機であり、出版社、超郵便局だ(127頁)という主張はまさにその通りで、私なんかノートパソコンがなかったら、論文や本は書けなかったし、これからも書けないだろうと思います。何しろ電車の中が貴重な執筆時間ですから。
 ところで、偏差値50でもというのは極端みたいですが、世の中は広いのでそんな教員もいないわけではありません。それでいて「T大までの人」よりも優秀だったりしてもこれまた不思議ではありません。大学に入った後の努力次第ということは確かにありえます。
 それに、仮に愚鈍でただただ幸運のみに恵まれた教員というのがいても、その幸運さを周囲の人に分け与えてくれるなら、こんないい先生はいないということになるかもしれません。教壇という不思議なところに立つだけで「師」というのは成立するのです。あとは弟子の心構え一つでしょう。
 実際そんなのがいたら張っ倒したくなるでしょう。でも、昔から大学というところにはどこでもいるんですよ、こんなのが。そういう師匠から本当にラッキーさというものだけを学ぶことができたらすごいことです。おそらく相当の我慢強さが求められるでしょうけれど、その暁にはあなたにも必ずや幸福が訪れることでしょう。

(マガジンハウス1997年1300円税別)

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