ロナルド・ドゥウォーキン『権利論〔増補版〕』
今から20年くらい前に、とある研究会でこのドゥウォーキンについて、本書の訳者の一人である小林先生のご発表を聞いたことがあり、そこではあまり面白そうな印象がなかったので、読まずに放ったらかしにしていました。
その後かなり大部の翻訳が何冊か出ましたが、流行りものに手を出さないでいるうちに、著者の本は基本的な学術文献の地位を獲得していたようです。それではということで今回読んでみましたが、なるほど著者をハートやロールズ以降のビッグネームの一人に数える人がいても不思議ではない内容でした。
最近はこのあたりに発言の根拠を置いて先端を走っている気分でいるのがいいのかもしれません。我が国の研究者は相変わらず外国人タレントを追っかけてはいても、ちょっと演技がうまくなっています。
著者はこれまでの大雑把な理論のモデルではうまく解釈できない問題を取り上げながら、現場の実定法解釈の立場に即した微妙な論理を丁寧に記述しています。その論理を追っかけている限りは実に頭のいい人だなと思わされます。とりわけ、実務家にコンプレックスを持っているタイプの法哲学者にとっては、この論理は羨ましく見えることでしょう。
ただ、私のような特に法哲学に使命感を持っていない趣味人の目には、これだったら、阿部泰隆や三ヶ月章のような実定法学者の著作の方がよっぽどためになると感じます。より理論的でもあり、かつ具体的・実践的だからです。
むしろ、実務家の方からは「あなた方がやっていることは実はこんなことです」と指摘してもらったり、あるいはもっと倫理や哲学について根本的な話を聞くほうが有益だという話を聞きます。
私は最近の法哲学者のように実務家を理想化する気もありませんが、彼らから呆れられつつ話を合わせてもらう気もない(もちろん私は法学部教授といった偉い場所にいるわけではありません)ので、要は根本的に考えるという点で互いに理解し合えたらいいと思っています。
それはともかく、訳者の解説にもあるように、著者自身が理論体系への指向性があるかどうかということについては、本書の段階では不明なところがあるようです。世評高い同著者の『法の帝国』もいずれ読んでみるつもりです。
ハートやロールズとの比較についてはその時に書くつもりです。
(木下毅・小林公・野坂泰司訳、木鐸社2003年)
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