山本夏彦『一寸さきはヤミがいい』
大学1年の頃叔母に勧められて以来、著者の書いたものをずっと読み続けてきました。ただ、本書はうかつにも入手しそこなっていて、古本屋で購入しました。
著者の長年のファンだからでしょうか、これまで文章の印象から老人と間違えられることが多々ありました。このブログはそうないと信じたいのですが、かえって老人が若ぶっているように見えているかもという不安もないではありません。
まあ、そんなことを言っているうちに私自身、気がつけば実年齢が老人の域に達しつつありますので、無事生きながらえれば、おのずと時間が解決してくれることでしょう。
本書は著者が亡くなる直前までの週刊新潮の写真コラムをその絶筆までをまとめたものです。人生最期のときまで書き続けていたのだから立派です。それにしても、88歳にして頭は全然衰えていません。すごいことです。
著者は私が読み始めた頃にしてすでに還暦を過ぎていたのですから、印象はずっと変わりません。同じことを倦まず弛まず書き続けていますが、読者としてはもうほとんど噺家の名人芸を堪能しているような感じです。
とはいえ、話題の中に以前より微に入り細に入り描き出されている箇所に改めて驚かされたりします。ベルサイユ宮殿の不潔さを昭和30年代の隅田川のそれにたとえるなんてのは書物による知識に加えて昔を実際に知る人でなければできません。老人の話はこれだから貴重です。
芸者のお仕事についても、田中角栄の遊び方を引き合いに出しながら、あ、そういうことだったのねとわかります。してみると、江戸時代の遊郭では芸者というのはどうだったのかとかえって疑問も湧いてきました。日本版風俗の歴史というテーマでコンパクトな本があると便利ですが、実際あるかもしれません。調べてみます。
(新潮社2003年1600円税別)
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