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2010年3月17日 (水)

井沢元彦『中国 地球人類の難題』

 毎日中国人留学生と付き合っていると、国家としての中国の行動もある程度類推が効くようになります。基本的に個人のエゴだけからでも類推可能な行動パターンが見られるのは、国家意識が実は希薄だからだと思います。彼らは国家意識ではなくて民族意識が過剰なのです。
 著者は19世紀のそれだと言っていますが、もっと前のものかもしれません。いずれにしても現代中国社会は近代市民社会とは無縁の代物で、中国共産党の全体主義的支配体制です。ダルフールやチベットで無茶苦茶やっていることは仮に知っていても、彼らに言論表現の自由は認められていませんので、そのことを分かった上で付き合っていかないと、かわいそうでもあるのです。
 その点で、両国で歴史の共同研究をしましょうなんて、土台無理な話です。自由な歴史研究は不可能な体制ですから。
 著者は靖国問題をめぐっても冷静な議論を展開しています。特に「儒教は『死者の霊を認めない』宗教だ」(131頁)という指摘にはうなずかされました。普段彼らを見ていて日本人よりもずっと無宗教的な感じがしていましたが、それでも旧暦の正月に無理をしてでも帰国しようとする留学生の心性の背景にあるのは、先祖崇拝の儒教精神なのかもしれません。
 本書で紹介されているソウル大学の李栄薫教授や「月刊中国」編集長の鳴霞氏、そして李登輝元総統などは本当に立派な見解をお持ちで頭が下がります。日本人の方が改めて教えられることが沢山あります。

(小学館2007年1200円+税)

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