ガルシン作・神西清訳『紅い花 他四編』
どの作品も印象に残る短編集です。しばしば潔癖なまでに正義感の強い登場人物が登場して、物語を動かしていきます。
物語の背景にある19世紀末の帝政ロシアの状況は、共産党一党独裁下のそれと違わなくて、自由を求め、自身の責任を全うしようとすると、周囲の壁やらガラスの天井にぶつかって圧殺されてしまいます。短編集の中の動物や植物を登場人物にした寓話形式の作品はそんな中で生まれたのだろうと思われます。
ロシアの人は昔からこんな感じだったのかと思うと、あらためて気の毒な気がしてきますが、そんな中からこうした文学が生まれてくるのですね。全編がひりひりとした軋轢の感覚に包まれていますが、変な言い方ですが、読んでおいて損はありません。いい短編集だと思います。
文学史家はガルシンをチェーホフにつながる系譜と考えているようですが、確かにそういう面はあると思います。でもまあ、だからどうっていうこともありません。作品を読むに越したことはありません。
一番印象に残った作品は「信号」で、薄給の線路番の主人公が、同僚の無謀な行為によって脱線しかねない状況に陥った列車に、身を挺してその危機を知らせる話です。いい話です。
そういえば最近ロシア語の勉強を再開しました。ラジオ講座を聴くくらいですが、ロシア史学史の人名と文献チェックができるくらいにはしておきたいからです。しかし、これからは文学が読めるようになることも目標に付け加えることにします。
(岩波文庫2006年改版460円+税)
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