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2010年4月24日 (土)

城山三郎『官僚たちの夏』

 1960年代の通産官僚の内幕物です。主人公は「ミスター通産省」と呼ばれる型破りの猛者ですが、実在の人物がモデルになっているかどうかはわかりません。小説の中では豪快で魅力的なキャラクターなので、読者としては肩入れしたくなりますが、やっていることは結局のところ産業界の統制を強めて省益を守ることです。
 まあ、これを典型的な官僚的人物がやったとしたら、面白くも何ともない話になっちゃいますね。いずれにしても、作者は登場人物たちの行動を客観的に書いているので、官僚の生態を知るためにはかなり有益です。
 人事や政策をめぐるこの熱いドラマの中でも、官僚というのは

 1.学校秀才にすぎないので、政治家のような腹芸はできない
 2.仕事をする上でのコスト意識がまったくない
 3.一生懸命外国の政策モデルを探してきてわが国に当てはめようとする

といった特徴が容易にわかります。一生懸命なところはわかりますが、根本が間違っていたときに責任をとるわけではないので、気楽かもしれません。ゆとり教育が間違っていても、謝るわけでもなくのうのうと大学教授に天下りという人を見たら、そんな気がしても仕方ないでしょう。
 本書では省庁間の縄張り争いや政治家との駆け引きも活写されていて、何とも人間くさい場面が満載ですが、人事の決まり方の微妙な内部論理が一番面白いと感じました。このあたりは民間企業とも共通していて、仲間内の評価が尊重されるところは社会学の重要テーマを形成すると思います。
 今構想中の権力論にもいろいろとヒントを与えてくれました。
 それにしてもやはり官僚というのは好きになれない人種です。

(新潮文庫昭和50年552円税別)

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