フランツ・モルナール『芝居は最高!』三田地里穂訳
シチュエーション・コメディの傑作です。最近この台本のハンガリー語版をハンガリーの国立図書館からPCでダウンロードできるようになったので、ハンガリー語版や英語版を見比べたりしながら読んでみました。
それで気がついたことですが、どうやらハンガリー語版から英訳されたとき、英米流のジョークが書き込まれたようです。作者自らが書き加えたのか、英訳者Wodehouseがそうしたのかは不明です。邦訳は英語版に拠っていますが、さらに私の持っている古い英訳にもないギャグがあったりするので、上演を重ねるにつれて練り上げられていったのかもしれません。
たとえばこんなところ。劇作家と招待先のお屋敷の召使との会話です(19頁)。
トゥライ 「エ~ト・・・結婚してるの?」
ドヴォルニツェック 「はい、旦那様、おかげさまで」
トゥライ 「奥さんは健在?」
ドヴォルニツェック 「はあ、まあ、そうとも申せましょう・・・二年前兵隊と駆け落ちいたしました・・・ありがとうございます、旦那様」
トゥライ 「私に礼を言うことはない・・・兵隊に言いなさい」
この手のギャグはハンガリー語版にはなかったものですが、随所にこうした笑いがちりばめられています。モルナールは晩年はアメリカで暮らし、ニューヨークで亡くなったので、自作に英語で手を入れていたことは十分に考えられます。物語全体は窮地に陥った登場人物たちが、劇作家が急場しのぎで書いた劇中劇を演じることで、最後は丸く収まるという、ちょっと凝ったつくりになっています。
アメリカでは1926年に初演。日本では1990年にテアトル・エコーが上演しています。次に上演される機会があったら必ず劇場に足を運びたいと思います。
(而立書房1990年1200円税別)
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