クリストファー・ソーン『太平洋戦争とは何だったのか 1941~45年の国家、社会、そして極東戦争』(市川洋一訳)
第二次大戦中の西欧諸国の人種差別的な言動が実に丹念に調べられていて、辟易させられます。ルーズベルトの対日発言なんて気分が悪くなります。
本書は日本の戦争における人種差別撤廃という理念が結果的に実現されていったということが自ずとわかるように書かれています。まあ、公平に見てそうなのでしょうけれど、戦勝国の歴史家からそんなに持ち上げてもらわなくてもいいんじゃないかと、戦後教育を受けた世代としては、ちょっと遠慮したい気持ちになります。
それにしても多くの資料や文献が用いられていて感心させられます。もちろん旧日本軍のえげつない側面も遠慮なく書かれていて、その点で著者の公平な態度は感じられますが、資料批判自体が十分なのかどうかは、また改めて研究される必要があるでしょう。
ただ、著者が日本語の文献を読めないというのは、研究者としては情けないのではないでしょうか。歴史学者や言語学者というのは、大体どこの国の言葉も半年から一年くらいしたら文献講読ができるくらいまでマスターできる人たちだと思っていましたが、それは日本だけのことかもしれません。
そもそも私か知っているハンガリー史の研究者仲間はみんな最低3~4カ国語はこなします。それって外国史研究者の必須条件だと思っていましたが、文献に恵まれた英米の研究者にはそもそもそんな考えがないのかもしれません。
この点ではこれからの世代の研究者にはまだまだやることがいっぱいあります。現代史はこれから徐々に秘密資料も公開され、資料が整理されていく分野です。太平洋戦争についても今後、わが国はもとより諸外国からも新たな研究者が出てくることが期待されます。
翻訳は複雑な言い回しが実に読みやすく処理されているように思います。日本語として読んで気になるところはありませんでした。相当に力のある訳者なのではないでしょうか。
(草思社2005年1900円+税)
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