畑村洋太郎『起業と倒産の失敗学』
2002年の『社長のための失敗学』の続編です。経営の失敗のカタログになっています。ベンチャー企業の失敗例が集めてありますが、著者は「失敗学を最も必要とするのはベンチャービジネスだ」と言います。ベンチャー企業は時流に乗って一時的な成功を収めたあとからが勝負ですが、そこから安定した組織作りを含めた経営の難しさも始まります。
本書ではそこで見事に失敗した実例が10例集めてあります(文庫版なので、単行本出版以降の情報も補足されています)。これを他山の石として自社の起業に活かせるかどうかということが、ベンチャー企業のみならず、すべての組織に共通する問題だろうと思います。
しかし、組織のすべてに例外なくあてはまるのは、経営者が「自分の失敗は見たがらない」ということです。他人の失敗ならいくらでも笑えますが、いざ自分のこととなったら、隠そうとする以前に見なかったことにしてしまいます。著者はこれを「失敗は隠れたがる」という言葉で表現しています。
そこには「私だけは誤らない」という過信があり(「私だけは謝らない」と行動で示す人もいますが)、取り巻きによってその過信は増幅されていきます。しかし、人間は誤りを犯す動物です。例外はありません。そのあたりの常識がはたらかなくなったときが危険なのだろうと思います。
しかし、誤りを今後に活かすなら、倒産しても再出発できますし、そうした実例も本書には出てきます。また、危機がそれほど深刻でない起業でも、今までよりよい組織が生まれます。
組織における重大な事故については、現場の担当者を免責した上で、本当の情報を共有することが必要ですが、その重要性はなかなかわかってもらえません。経営者にとってはあまりに恥ずかしい誤りなんてのがあるからでしょう。
そのあたりが組織再建の鍵なんですけれどね。
(文春文庫2006年571円+税)
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