阿部泰隆『やわらか頭の法戦略―続・政策法学講座』
最近の法哲学の必読文献とされるものを読まずにいたら、いつのまにか研究会で話題について行けなくなっていましたが、それではと思って読んでみたらやっぱり面白くありませんでした。
法哲学者は法律実務家に劣等複合意識があるのか、現実の諸問題の解決に有用な理屈を実務家にすり寄って捻り出そうとしているように見えるときがあります。それだったらいっそ思い切って哲学をするか、実務家になるかすればいいと思いますが、それなりに法学部の教員という地位にもこだわりがあるのでしょう。
この点で、法解釈学にとどまらず、弁護士実務もこなし、豊かな発想で様々な政策提言までも行なう著者は、とんでもないスーパーマンに見えます。そして、著者の思考の背景には法哲学的にもシンプルで力強い思想があるように思います。
本書の著者の提言は一見極端に見えて、実によく考え抜かれています。これに対して「極端だ、現実の政治過程では実現が困難だ、等の反論がある。しかし、検討をする前からダメだと決めてかかるとか着地点を決めるのではなく、あるべき姿を先にきちんと描いて、その上で、その実現の戦略を考え、現実と妥協すれば、よりよいものができるであろう。そして、このような過程をたどれば、誰がどこでどのように歪めたかがわかるので、立法過程の透明化に資する」(「はしがき」iii頁)と述べています。ちなみに、最近は審議会の議事録も官庁のホームページで公開されていたりしますから、余計透明度は増しています。
著者はこういう考えで政策提言してきたからこそ、実際に後の立法にかなりの影響を与えて来ています。
ところで、著者のホームページアドレスが巻末に載っていたので覗いてみると、著者ご自身の仕事についての簡潔で要を得た印象深いフレーズがあったので、紹介しておきます。
「密林のような行政法規の共通システムを体系化し、不備な法を合理的に解釈し、さらに、裁判で実現するほか、アイデアを考えて政策を作り、そして法制度化し、立法にまでもっていく、」(http://www.ne.jp/asahi/aduma/bigdragon/index.html)
ということを実際にできるのだからたいしたものです。同ホームページにも様々な論考やエッセーが載っていて、つい読みふけってしまいます。とにかく面白くてすごい人です。
(第一法規平成18年2,800円税別)
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