竹田青嗣『「自分」を生きるための思想入門』
かつて読んだ著者の『自分を知るための哲学入門』が面白かったので、本書も読んでみました。しかし、語り下ろしのためか、本書にはいわゆるテクストの快楽的な部分がなくて、ちょっとがっかりしました。
ああでもないこうでもないとテクストを紡ぐ作業は、普通なら読みにくい文章になるだけのように見えて、実は思想書にとっては欠かせない要素なのかもしれません。文章を書きながら考えるというリズムが読者に共有されるとき、そこに独特の思考の空間が生まれるからです。
もっとも、本書では通り一遍ながら、多くのテーマに触れられているために、著者の思想の全体像はとらえやすくなっています。特にフッサールを読み込んだ著者の見方はポストモダンには批判的で、かなりユニークなところがあります。私もまだ若い頃に、翻訳が出たばかりの『イデーン』をむさぼるようにして読んだ記憶が蘇ってきました。
著者は人生を「欲望ゲーム」の総体と考えています。そして、そのゲームのルールが対等で、開かれたものであることと、そのルール変更が可能であることを重要な要件と考えています。この思想はウィトゲンシュタインの思想の橋爪大三郎的読みの影響も受けているのかもしれませんが、分かりやすくてなかなかいい感じです。
ただ、善とか美というものを説明する場合には、ルール以外のものから考えていかなければならなくなるでしょう。この点で、どこかでプラトン的な要素がないとうまくいかないような気がしますが、どうでしょう。
もう少し著者の他の本も読んでおきたいと思います。
(芸文社1992年1300円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント