土屋賢二『ツチヤ学部長の弁明』
「学部長に選ばれたとき、わたしを知る人間は例外なく驚きました。中でも一番驚いたのはわたしです」(29頁)という著者は無事お茶大文教育学部長の任期を終えられたようですが、おかげでこんな本ができてしまいました。
いつものように意外な論理展開の冗談が満載です。しかし、さすがに学部長ともなると、ときには真実を述べなければ収まりがつかないこともあるようで、「学部長からのメッセージ」では冗談ばかりかと思ったら、結構良い言葉も混じっていました。たとえば、
「大学の四年間は貴重です。金になるかどうか、役に立つかどうかといったケチくさいことを考えずに、知りたいことを自由に追求できる夢のような時期です。断言しますが、どんなに勉強しても賢くなりすぎることはありません」(32頁)
という感じです。ひょっとしたら箴言かも。その文章の少し前にも、なぜ勉強しなければならないかというと「学問が面白いからです」と明快です。これ正しいですけど、世の中にはただただ大学の教授先生になりたいという目的のために渋々研究している人もいて、まあ、そういう先生の下には権力に惹かれる傾向のある学生が集うので、それはそれでいいんでしょうけれど、土屋先生はやっぱり学問大好きの人なんだなあと、こんなところから勝手に読み取っています。
私は著者の冗談についてはほとんど禁断症状が出てくるくらいですので、著者の希望通りまずは著書を買うように努めています。もちろん、あっという間に読んでしまいますが、この毒にも薬にもならない冗談が、本当に心地良いのです。
(講談社文庫2006年533円+税)
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