橋爪大三郎『橋爪大三郎の政治・経済学講義』
著者の本にはいつもながら啓発されます。本書は『橋爪大三郎の社会学講義』1,2(夏目書房)を内容別に編集し直したものですが、単行本の版元の夏目書房が2007年に倒産していたとは本書の著者あとがきで初めて知りました。
著者の誤解を恐れない大胆な議論は、あらゆる学問の門外漢的立場に立つことのできる社会学者ならではのものでしょう。社会学も過度に実証的な研究は少なくないのですが、それでも今日なおこの分野の人びとが世間に向かって斬新な物の見方をいろいろと提起していることは確かです。
こうしたことは本来なら哲学者がやるべきことなのでしょうが、そっちの専門家たちの方は西洋の哲学者のテクスト読解作業に埋没してしまっている感じです。
本書で感心させられた記述を幾つか挙げておきます。
・「武士の一番の問題点は、彼らがもともと泥棒だということです。もともと貴族の所有地を警備していたはずが、いつのまにか泥棒になり、気がついてみたら、貴族の所有地を全部取り上げていた。これが武家政権です」(75頁)
・「民主主義の根本は何かと言えば、それは法律を自分たちで制定する、このことに尽きるのです。法律の体系を自分たちで作る、“偉大なる立法行為”こそが、民主主義、そして市民社会の出発点なのです」(87頁)
・東京で「集合住宅を建てれば土地は山の手線の内側だけで十分という試算もある」(212-213頁)
・「戦争になると、住民は,都市国家の場合は都市国家の城壁の中に逃げこんで全員一致で守るんですが、日本人の場合はどこかへ逃げてしまう。そして戦争が終わると戻ってくる。どっちが勝っても元の生活はできるわけで、一般民衆の中立が保証されている」(303頁)
といった具合で、まだまだたくさんあるのですが、どれも刺激的で考えさせられます。1990年代に書かれた文章が中心ですが、今も十分通用します。それだけ日本の政治状況も経済状況もぱっとしないということでしょう。その点も含めて改めて社会学的思考の妙味を味わうことができる本だと思います。
(ちくま学芸文庫2008年1200円+税)
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