門田隆将『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』
元日本陸軍北支那方面軍事司令官根本博中将とは、敗戦後の昭和20年8月20日に内蒙古の在留邦人4万人を救うために、武装解除命令を拒否し、ソ連軍と激戦を展開した人物です。
在留邦人は国府軍の庇護の下、無事帰国を果たしましたが、根本博はそのときの恩義を忘れず、義には義をもって返すべく、国府軍が共産軍との戦いで窮地に陥った1949年に台湾に現れます。いわゆる国共内戦の決着がついた金門島の闘いで見事な戦略を立て台湾を勝利に導いたのが、この根本博でした。
「ラスト・サムライ」と呼ばれるべきはこの人でしょう。義をもって返すなどと言うのは簡単でも、まさか台湾に密航までして戦ってくるなんて、想像を絶しています。映画になっても面白いと思いますが、誰も史実に基づいているなんて思わないでしょう。
この行動原理は、その道を極めるやくざの中においてさえも今日もはや見られなくなっていますが、肖像写真を見ると、根本博は確かにちょっと半端でない迫力を持った面構えで写っています。しかしその迫力は知性と気品を兼ね備えていて、実に格好いいのです。一級の軍人とはこういう感じだったのでしょう。(対照的なのが辻政信で、本当に小賢しい役人みたいです。)
著者の門田氏の取材は見事の一言に尽きます。よくぞこの埋もれた歴史を掘り出し、膨大な文献を調べ上げ、関係者のインタビューをこなしたものです。プロの技です。
本当にいい本でした。おすすめです。
(集英社2010年1600円+税)
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