諸田玲子『思い出コロッケ』
著者は時代小説の名手だそうですが、初めて読んだ本書は現代小説で、向田邦子とその妹の和子さんに捧げられた短編集でした。1980年代前後が舞台になっているので、時代小説というわけではなくても、あの時代はすでに過去になったのかという、ちょっとノスタルジックな思いをしました。
著者はかつて向田ドラマのノベライズを手がけていたそうで、心なしか向田邦子の作品の雰囲気と通じるものがあります。著者自身が本書のあとがきで、向田邦子の『思い出トランプ』について「思い出をシャッフルして無作為に並べた、シリアスだけれどユーモアやペーソスもあり、じわじわっと心になじんでくる小説集です」(233頁)と述べていますが、その言葉はそっくり本書にも当てはまります。
実際に読み比べてみると向田邦子とは異なるのかもしれませんが、それぞれの作品がしっかり構成されていて、ちょっと怖いオチが付いていたり、ほのぼのとしたり、あるいは驚かされたりします。向田ファンの友人にも機会があったら勧めてみます。また、著者の時代小説もそのうち読んでみたいと思います。
(新潮社2010年1500円税別)
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