土屋賢二『貧相ですが、何か?』
「若いうちは金がない。中年になると時間がない。老年になると元気がない。もっと年をとると命がない」なーんてことがたくさん書いてあります。それから、助手との会話というのが、いつもながら独特のボケ方とズレ方で笑わせてくれます。
「君は新聞を読んでる?」
「読んでません」
「新聞なしで困らないか」
「困りません。知りたいことは人に聞きますから」
「いい年をして他人に頼りっぱなしなのか」
「先生だって新聞に頼っているんじゃないんですか。たいてい大人の意見って、新聞の受け売りでしょう。自分の意見まで新聞に頼ってるじゃないですか」
「自分の意見より気が利いているんだから仕方ないだろう。君だって人に聞いたら正確な情報が得られないだろう」
「でも新聞だって誤報があります」
「私の誤りに比べればたいしたことない」
「捏造記事もあるし、偏向記事もあります」
「私の捏造と変更は新聞よりずっとひどいんだ」
「新聞の擁護より、ご自分の悪口になってますよ」(188-189頁)
こんなことをいつも考えているとしたらスゴイ人です。連載の締め切り前に突然考えるとしてもなかなかこうはいかないでしょうし、なにより著者の専門の哲学や論理学と両立しているのだから、頭の構造がどうなっているのか知りたいものです。
(文春文庫2009年476円+税)
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