池田清彦『だましだまし人生を生きよう』
著者の自伝です。虫好きというのはすごいんだなあ、と感心させられます。私も子どものころ、田舎に育ったので、カブトムシやクワガタをたくさん捕まえましたが、そのころから一貫して好きでいられるなんて想像を絶するものがあります。
著者は子どもの時分から丹念に標本を作って今も持っているだけでなく、今も新種のカミキリムシの捕獲にご執心で、「日本産のすべてのカミキリムシをネットインするまでは死ぬわけにはいかないのである」(216頁)とくるのですから、驚かずにはいられません。
著者のもうひとつの顔は、構造主義生物学の理論家としてのそれで、本書からもその一端が窺われます。それがどんな理論だったかは私も忘れてしまっていますが、もう一度著者の本を読み返してみようかという気になりました。ただ、眼の構造が違うショウジョウバエと哺乳類はそれぞれに「同じDNAを異なって解釈しているとみればよい」というフレーズで少しだけ思い出しました。
まあ、それはいずれ思い出すとして、本書では学問論についても納得のいくことが書かれていました。
「学問の価値はつまるところ、既存の科学や既存の社会の前提を疑って、新しい枠組みを提示することにある。それは新しい学問分野の創出であるとともに、行き詰まった世界を救うもっとも合理的な方法でもある」(213頁)
そうですよね。私も結果が伴うとは限りませんが、そういうつもりで学問をやってきていましたし、これからもそうするつもりです。勇気づけられます。
(新潮文庫平成21年400円税別)
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