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2010年9月23日 (木)

小松秀樹『医療の限界』

わが国の医療制度が崩壊寸前の状態にまで来ているということがわかります。何らかの制度的解決が図られなければなりません。市場原理に任せておくとアメリカのように、簡単な盲腸の手術で一日の入院で住んでも243万円もかかる(161頁)ようになります。ちなみにアメリカの乳児死亡率は貧しいキューバよりも高いとも(同頁)。

医療制度に限らず、社会制度を改革するには、まずは全体を見通せる洞察力とそれを支える教養が必要ですが、著者はこの点で要件を十分満たしています。実に勉強家で、さまざまな分野の勉強をされていて、冷静かつ公平なものの見方ができる人です。

法律学にとっての手続法の重要性が、まさか本書で強調されているとは想像しませんでした。しかし、簡にして要を得た記述で感心させられました(第3章「医療と司法」)。医療事故については、著者は「事故調査機関の調査結果に絡めて、民事裁判の第一審に相当する判断を下す専門機関が必要だ」(201頁)と主張します。賛成です。

マスコミが医師や看護師を感情的に標的にし、検察も世論に敏感に反応し訴訟に持ち込むようになると(そうなって久しいのですが)、看護師が爪を剥がしたというような話になったりするわけです。

劣悪な労働条件の中で、わざわざ標的になるために医療に従事する人は、いずれいなくなります。村木さんも復職されたことですし、苦労された経験を活かして、さらに職域を広げ、この辺の問題を扱ってくれるといいと思うんですけどね。

(新潮新書2007年700円税別)

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