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2010年9月 5日 (日)

斎藤美奈子『読者は踊る』

単行本が1998年に出ていて、2001年に文庫になった本です。独特の恐ろしいほど正確な批評眼により、当時の本253冊が急所にナイフを突き立てられるばかりか、ぐるりと刃を回転させて肉をえぐられるといった感じです。

くだらない本にも丹念に目を通しては、そのトンデモぶりを指摘する著者のこだわりぶりが見事です。読者代行業を自認するだけのことはあります。著者にボロクソに言われた本は、もう読まなくていいというものと、どれほどのおバカぶりか確かめたくなるものに分かれます。

とにかく、今はまったく忘れられてしまっても、かの10数年前に確かに一世を風靡した本というのが結構あって、あらためて、へぇーそんな本だったんだと呆れるやら、感心するやらで、これが結構楽しいのです。

思い返してみれば、あの立花隆が世の中の事件の原因をすべて環境ホルモンのせいにしていたなんてことがあしましたね。あの人は本当は結構おっちょこちょいで、ちゃんと資料を読んでいないのではないかと思うことがありましたが、本書のようにきっちりと引用で証拠を示されると、やっぱりねえ、と思ってしまいます。

当時は文部科学省の寺脇研が盛んに発言し始めた頃でもあったので、著者はすかさず警告しています。このあたりさすがです。文庫版への著者の追記でも、ゆとり教育の導入が始まったところでしたが「あの教育改革は天下の改悪であった」と悟る日が来るに違いない(285頁)と述べていますが、予言は成就しましたね。

今大学は学習内容が3割減のまま入学してきた学生たちばかりなので、全国の大学の先生たちは話がまったく通じなくて困っています。寺脇研も今は天降ってどこかの大学の教授サマですが、学生たちに話が通じないことをきっと実感していることでしょう。

(文春文庫2001年676円+税)

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