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2010年9月 9日 (木)

池田清彦『人はダマシ・ダマサレで生きる』

リベラルでラディカルな、つまり身勝手で理屈好きの著者らしい本です。人は常に誰かに騙されながら、また他人を騙しながら人生の局面を乗り切っているのですが、そのからくりが独特のアップテンポの語り口でどんどん述べられます。

トウモロコシを原料にして車を走らせるなんてのは、一時流行りましたが「カネのあるやつが途上国の人の食べ物を奪って、自分の楽しみのために使うという、とんでもない話」(30頁)であり、国債を発行する国家は戦後まもなく預金を封鎖し「その間にインフレを起こし、そして国債の価値を無にしてしまった」(127頁)というわけです。

また、著者は、かつてのロシアが経済的に困窮したときに「カネをぽーんとあげれば、北方領土なんてすぐ返ってきたはずだ。困窮している相手に経済支援をして返還交渉を進めるのは、結局100兆円で売ってくれというのと同じことだ」(116頁)と言います。アラスカみたいに売ってくれることもあるかも、と、これは騙す方の話です。

全体にどちらかというとダマサレ情報が多い感じですが、これは国民の側から見た場合ですので、国家や役人や科学者の方から見るとダマシのからくりということになります。ただ、著者の思いをありったけを一気に吐き出した感じなので、一つ一つの問題があっさりと書かれすぎているよう気もします。

虫を食べる話とか、アリの生態の特徴とか、急性アル中になって命を落とす鳥の話とか、生物学者ならではの話題や、人間が農耕を覚えて富を蓄えることから戦争が始まるといったユニークな考察など、読みどころは満載です。最後に現代社会の最大の騙しについても述べられていますが、それは本書をお読みください。言われてみれば確かにそうだよねって感じです。

(静山社文庫2009年648円+税)

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