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2010年9月25日 (土)

日下公人『デフレ不況の正体』

この世に評論家を名乗る人は多くても、著者くらいユニークな発想をする人はいません。どこからこのぶっ飛んだ発想が出てくるのか、いつも驚かされます。

著者はかつてアメリカで、自由の女神と同じものを日本はロサンゼルスに寄付すると言ったことがあるそうで「アメリカは自由の国、平等の国と言っているのだから『平等の女神』を日本はロサンゼルスかサンフランシスコに建てるから、有色人種を受け入れよ」(45頁)と。

こんなことを言う前に、そもそも発想できないのがほとんどの日本人ではないかと思いますが「英語の上手い日本人で、アメリカで何か得をしようと思っている」(同頁)連中は発想自体が凡庸なアメリカ人になっているので、ますますいけません。

だから、クルーグマンの言うことを真に受けて、インフレターゲットを掲げれば、たちまち景気が浮上し、財政赤字がなくなると説くような竹中平蔵や最近では勝間和代のウソが簡単に見破れるのでしょう。要するに「資金需要がないときは、いくら貨幣を刷っても効果がない」(61頁)というわけです。

また、冷戦崩壊直後のソ連から原爆2万4千発をまとめて買い取って、原子力発電所で燃やすという案は、実行されていたら面白かったでしょうけれど、今からでも検討して損はないことです。こういうことをとりあえず検討してみて、政策にさまざまなオプションがある状態にしておくことが、いざという時に役に立つ構想力と決断力を養うのだと思います。

ほかに、子どもや胎児にも投票券を認めて親が代行するという案(127頁)にも感心させられました。そうすると、子どもの未来を心配して、長期国債の発行を控えるといった、目先の利益にとらわれない投票行動が期待されると言います。

で、結局、わが国が近代化の中で捨て去ってきた、しかし、まだまだ残っている情感やモラルといった、お金で買えないものに対する価値観を回復させることが肝要なのでしょう。そうすれば、人びとが何にお金を使うかが見えてきます。

そして、そのことによって、すでにそんなものを失ってしまったかあるいはまったく育ててこなかった世界に対して、江戸時代の人びとが世界を驚かせたように、人びと自身が身をもって示すことができるようになるというわけです。

以前、犬山市のテーマパーク「明治村」に行ったとき、復刻版の小学校用修身の教科書を見つけました。弱い者いじめはやめましょうとか、当たり前のことが当たり前に書いてあって、これが結構感動的でした。本書を読みながらふとその記述が目に浮かんできました。どうやら昔の人びとがすでにやっていたことに、かなりのヒントが隠されているように思います。

頭をいろんな角度から刺激してくれる本です。

(KKベストセラーズ2010年1400円+税)

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