海老原嗣生『「若者はかわいそう」論のウソ ― データで暴く「雇用不安」の正体』
学者という人種はしばしば非常に恣意的にデータを用いてとんでもない結論を導き出します。文献だってちゃんとした読解力があるか怪しい連中が山ほどいます。机の上の妄想に合わせて数字や文字を処理するのが原因のようです。
本書では企業が金儲け主義のために正規雇用を減らして派遣社員に切り替えたため、ワーキングプアやニートがたくさん出てきてしまったというマスコミお気に入りの結論が何の根拠もないどころか、データと正反対の結論であることを示しています。
有名な玄田有史などは何にもデータに基づいていないということが、本書によってバレてしまいました。まあ、某検事のようにデータを改竄したわけではありませんが、学者としてはどうなのって感じです。よっぽどマスコミに受けたかったんでしょうね。
本書の主張はシンプルです。80年代から現在にかけて大きく変わったことは、
1. 85~95年の10年間にわたって起きた、為替レートのあり得ないほどの変化
2. 85年から連綿と続く大学進学率の急上昇
3. 80年以降急低下を始めた出生率
という3つに集約されるといいます(205頁)
要するに大学生がやたらと増えて、大学卒の求人の実数は変わっていないにもかかわらず、大学生の就職難が生じているということ、円高で海外に生産拠点が引っ越したことにより、国内にブルーカラー正社員の仕事がなくなってしまったことが結果として導きだされます。
対人折衝が苦手で、昔だったら製造業で黙々と仕事するタイプの若者が一番煽りを食らっているわけです。高校卒業後に就職できず、大学に緊急避難してもやっぱり就職できないというわけです。
他方で中堅中小企業は変わらず人材難に悩まされているというアンバランスな現象も起こっています。まあ、学者とマスコミが結託して事実を曲げているのですから、若者の判断も影響を受けないわけにはいきません。
俗説に与しないためにも、目を通しておきたい本です。企業の選び方や人生設計の指南となる本なので、学生にも勧めておきます。
(扶桑社新書2010年760円+税)
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