越川芳明『トウガラシのちいさな旅 ボーダー文化論』
アメリカ、メキシコ、ラテンアメリカ、アフリカ、沖縄と著者の関心は境界を越える文化にあります。登場人物はゲバラ、ポール・ボウルズ、ジェイン・オア、フリーダ・カーロ、キッカプー族、中江裕司、目取真俊などなど。どのキャラクターも熱くてひりひりした感受性を抱え魅力的です。
著者はあとがきで、ボーダー文化論の優れた書き手たちは、みなアマチュアの心を持っていると述べています。著者もまたそうで、いろいろなところに出かけては、ほとんど無防備な状態で現地の人と交わり、話を聞いたりしているときの文章が一番のびのびとしていい感じです。
他方、机の上で現代思想家の引用をしながら論文調に筆を進めると、雑誌ブルータスかなんかの映画評みたいで、格好は良いけれど心に残らないものになってしまいます。筆力があって何でもできてしまう人だけに、そうした落とし穴もあるように感じました。
でもまあ、これだけ刺激的で魅力的な本を書ける人はそうはいません。大したものだと思います。文章は何のかんの言っても今福龍太よりもずっと素直でいいと思います。これだけ旅をして、たくさんの本を読んで、映画館に通って、それが魅力的な本書に結実しているのですから大したものです。
欄外にところどころ掲載されている絵画や写真がもう少し大きければありがたいのですが、値段との兼ね合いで仕方ないのでしょうね。残念ですが、気になったものは自分で調べなさいといういことでしょうね。
巻末の「私家版 ボーダー文化論入門書50」も参考にして、いろいろ読んでみたいと思います。
(白水社2006年2500円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント