ジロドゥ『オンディーヌ』二木麻里訳
昔アテネフランセでフランス語を習っていたとき、中級クラスが終わった頃だったかと思いますが、学習者にとってフランス語で読むのにいい本を紹介してもらったのが、この『オンディーヌ』でした。物理学の研究をしていて、原子爆弾の開発をするのがいやで日本に来たという変わり者のフランス人の先生でしたが、面白い人で、みんなで一緒にコンパに行ったこととか、今でもよく覚えています。
しかし、本書のフランス語原書も持っていますが、読まないままで何十年も経ってしまいました。それでもこうしてたまたま見つけた翻訳書を読んだわけですから、やはりどこか気になっていたのでしょうね。で、読んでみるとやはり面白かったです。
異類婚姻譚を下敷きにしていますが、愛がテーマの現代的な劇です。男女間の微妙な心理が趣向を凝らして書き込まれています。上演も一度見ておきたいですね。主人公のオンディーヌにふさわしい女優はめったにいそうにありませんが。
この作品ではオンディーヌが恋に落ちる男が凡庸で愚鈍なため、どことなく宮崎アニメみたいな印象があります。もうちょっと賢い男性を描いて話を展開させてもいいような気もしますが、それも作者の意図するところなのでしょう。
作品全体に様々な意匠が必ずしもうまく機能していないところがありますが、フランス人はこれを深読みして難しいことを語るのが好きだったりもするかもしれません。訳者による演劇学科の卒業論文みたいな解説も分量が60頁以上あります。
翻訳文でいただけなかったのは「すべからくわたくしにお教えくださいませ、ハンスさま」(44頁)とうところで、「すべからく」の誤用はほんといい加減にしてほしいものです。翻訳家がおバカな言葉遣いをしているときには、編集者がチェックしてくれないとねえ。恥の上塗りになりますよ。
そのうちフランス語原文も読んでみます。
(光文社古典新訳文庫2008年590円+税)
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