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2010年10月 7日 (木)

W.ゲルダート『イギリス法原理』末延三次・木下毅訳

イギリス法の理論的エッセンスがコンパクトにまとめられた本です。教科書としてかつてのスタンダードだった本ですが、古本屋で105円だったので、つい買って読んでしまいました。

私に限らず、日本の法学教育を受けた人は、みんなドイツ法の圧倒的影響下にあり、基本的法律用語はすべてと言っていいくらいドイツ語からの翻訳語に由来します。そのため、本書を読んでまず引っかかるのが、用語です。苦心の翻訳で原語も表記されているのですが、併せて読むと余計に混乱します。

用語の次に驚かされるのが、融通無碍で複雑な法システムです。もっとも、現実の諸問題に対応するのには優れた面があることもわかります。ただ、裁判官は大変でしょうね。とにかく過去の判例に当てはまるものを見つけてこなければなりませんから。

このとき原理的に正当性の根拠になるのが、コモン・ローとエクイティなのですが、この関係が該当箇所の記述を何度読んでもよくわかりません。エクイティーはコモン・ローを補完しながら独自の正当性も主張するそうなのですが、その呼吸は裁判官の名人芸的解釈にまかされているのかもしれません。

しかし、そんな法律家は日本とは違って、こんなに複雑でかつ創造的な作業をしているということで、どうやらかなり尊敬されているようです。日本では弁護士はあくまで法律関連情報係で、企業でも訴訟に関わる限定的な役割しかまかされません。経営の総合的判断はあくまで経営者の独擅場です。このあたりアメリカとも随分違います。法律家の社会的地位をとってみても、法文化の違いが際立っています。

いずれにしても、本書はいい本でしたが、適正手続については十分な記述がありませんでした。今ちょっとまとめている原稿があるので、C.ウィリアムズの最近の本も読み返しておきます。

(東京大学出版会1981年2000円)

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