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2010年11月30日 (火)

木田元『反哲学入門』

見事な哲学入門です。英独仏にギリシア、ラテンと語学の達人で稀代の読書家が丹念に読んでわかったことをきっちりと述べています。どうかすると原典どころか翻訳書さえも読まずに勝手なことを書いては思想家然とした態度を取っている人も少なくない業界で、この勤勉さと誠実さだけでも希有なことです。真のプロの仕事です。

著者は哲学というものを、超自然の立場から(つまり形而上学として)存在を考えることだとしていて、それはわが国には存在しない思考様式であり、なくてもすむものだと考えています。わが国では異常な情熱というわけです。

しかし、これはもちろんご本人がその魅力に取り憑かれているからこその発言で、だからこそ万人には勧めないとも言っています。子供のための哲学なんてもってのほかというわけです。

ただ、存在の不思議、世の中の不思議を考えるということがすでに哲学なのだと考えてもいいんじゃないでしょうか。あまり狭く考えてもねえ、とは感じます。

もっとも、著者はそうした西洋哲学の伝統に対して反旗を翻したニーチェ以降の哲学を「反哲学」と呼んで、そこから見える哲学史と現代哲学の問題を鮮やかに論じてくれています。この見方は確かに説得力がありますし、魅力的です。

著者の本は今まであまり読んでこなかったので、これからも買い集めて読んでいこうと思います。遅ればせながらも気がついてよかったです。

(新潮文庫平成22年438円税別)

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