木田元『ハイデガー』
先日九州大学の旧校舎の近くにある本屋さんで本書を見つけました。岩波は買い取り制なので、売れ残りでも返本されずにいつまでも書店に置いてあります。本書は現在入手困難なので、これはお買い得でした。
でも、著者のエッセーが面白くなかったら買わなかったでしょうね。私はハイデガーはあまり面白いと思わないからです。小難しいことを取り除くと結構普通のことしか言っていないからです。
でも、著者はハイデガーが読みたいばかりに哲学を学び始めた人ですから、やはりそういう人の言葉に耳を傾けると、ハイデガーの面白さも少しはわかってくるかもしれないとも考えました。
しかし、結局のところ、ハイデガーの面白さはあまりわかりませんでしたが、著者の肉声が伝わってくるような文章の魅力は、本書でもしっかり堪能することができました。
著者はハイデガーのナチスへの荷担ぶりも隠そうとはせず、独特の呪文のような言い回しも決して快く思っていなくて、その点ではもはやほとんどハイデガー心酔者とは言えません。
著者はむしろハイデガーを哲学史家として高く評価していて、そのあたり妙に冷静です。だから、ハイデガーによるニーチェの解釈などが際立っているという評価になりますが、そうなのかもしれません。これはちょっと読んでみなければという気になってきました。
でも、ハイデガーよりはニーチェ、そして、ニーチェよりはキルケゴールのほうがずっといいと思っている私のようなつむじ曲がりは、どうも素直にそうですかという気持ちになれません。
ただ、著者が最後にハイデガーの問題提起を受けて、「西洋」という文明の隠れた本質を見抜くという課題を彼(ハイデガー)から引き継がねばならないのではなかろうか」(127頁)と述べているところは同感です。著者が「反哲学」などと言い出すのはこのあとからだったと思いますが、そうした知的運動の継承という点からすると、本当に誠実に努力された人だなあと感心させられます。
(岩波現代文庫2001年1000円+税)
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