マルジャン・サトラビ『ペルセポリスⅠ イランの少女マルジ』園田恵子訳
イランから漫画家が出てくるなんて驚きです。それもイスラム革命やイ・イ戦争の時代の回想記です。あー、こんなんだったんだ、と驚かされることがたくさんあります。
絵も独特の味わいがあり、コマ割りも絶妙です。この巻では主人公の10才から14才までが回想されます。淡々とした語り口ですが、当時の日常がよくわかります。
イスラム革命以前のイランがいかに自由だったかということと、その後の狂信的宗教のテロリズムが、そして、イラクとの戦争の日々が描かれています。
著者と等身大と思われる主人公はいろいろと考え、反抗しながら徐々に大人になっていきます。その目つき、顔つきには、この年頃のひりひりした感じがうまく表わされています。昔見かけたことのある作家の中沢けいみたいな目つきです。
先日インドネシアのムスリムに肩入れしているジェンダー研究者の話を聞きましたが、この本は読んでいないようです。ヴェールは自発的なものだと力説していた研究者は、イランのとんでもない女性虐待のことはご存じないか見たくないようでしたから。
何せ、1960年代後半のテヘランはパリと変わらぬファッションの女性が街を闊歩していたくらいですから、ヴェールをかぶりたくない人は沢山いたのです。
そんなことは本書を読まずとも分かりそうなものですが、研究者というのは結構基礎的情報をないがしろにして勝手なことを言うことがあるので、世間的に立派とされる人でも10人に8人は偽物だと思えというパレート比率に従っておくのがいいと思います。
ま、とにかく本書はイスラム圏の中でもイラン理解の必読文献です。
(バジリコ2005年1400円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント