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2010年12月10日 (金)

H.L.A. ハート『法学・哲学論集』矢崎光圀・松浦好治他訳

ハートの法哲学論集です。それぞれの論文の中でさまざまな論敵と議論を戦わせてきたことがうかがわれて興味深いです。中でもおそらく一番気になっていたのがドゥウォーキンではないかと思われます。ハートによるドゥウォーキンの学説のまとめも丁寧で要を得ているのは相当読み込んだ証拠でしょう。ドゥウォーキン本人が自説の骨子をちらりとしか語らない傾向があるので、ハートのまとめを読むほうがわかりやすかったりします。

ドゥウォーキンが政治的価値判断も含んだ法の基礎理論を提唱しているのに対して、ハートは法が法だけで成り立つ(ように見える)ことの重要性を際立たせた理論構成なのですが、この対立はおそらく世界観の対立にまで発展するはずです。だからこそお互いに気になるのでしょうけれど、読者としてもこの見解の相違について考えることは有益だと思います。

先日京都大学の亀本先生がそうした議論を題材にした著書を出されていたので、近日中に入手して読んでみたいと思います。ちょっとうかうかしているうちにも、いろんな人が意欲的な著作を出しているので、追々フォローしていくつもりです。

しかし、ハートにしてもドゥウォーキンにしても、自前の理論を何とか立てようとしているところはやはり立派です。哲学的には一流とは言えないような人でも自前にこだわるところはたいしたものです。翻訳だけやっても、また、えらそうに批評だけしていても、何事も一から作るのにはかなわないからです。そうした著作家の創造的な姿勢をこそ見習わなければといつも思います。

(みすず書房1990年6000円+税)

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