内田樹『武道的思考』
いい本でした。目からウロコの指摘や解釈が満載です。身体論や武道の話題だけではありません。学生運動や国防、外交にまでにまで話題が広がります。私にとって「言われてみれば確かにそうだよね」という指摘をいくつか次に挙げてみます。
・「おむつなし育児」を実践するお母さんたちが口々に言うのは、子供の便意をぴたりと感知して出てきたときのうんちは「かわいい」というものである(167頁)。
・対立したものを対立したまま両立することが「術」である(甲野善紀先生の言葉として、168頁)。
・教育を全国斉一的に管理する機関がなかった時代(つまり明治維新まで)、日本の教育はその当時の世界最高水準にあった(234頁)。
・へなちょこなゲバ棒でジュラルミンの盾と警棒で武装した機動隊と戦うときにはじめて「ベトナムの農民との連隊」が幻想的に成立したのである。そして機動隊に蹴散らされて、血まみれになるときにはじめてアジア人としての恥の感覚が少しだけ軽減したのである(251頁)。
・[イラク戦争でわが国が出した]当初援助額である九十億ドル(一兆二千億円)のうち、クウェートに渡ったのは六億三千万円であった。あとはアメリカが持っていった。国際社会は「国際貢献」という名分でアメリカに「転がされた」日本の愚鈍を笑ったのである(276頁)。
・アメリカは是まで実に多くの国際紛争の調停を試みてきたが、歴史が私たちに教えるのは、彼らは調停者としての能力が極めて低いということである(294頁)。
・日本はアメリカが世界中の人びとから敬愛され、その繁栄を世界中の人々が望むようになるためには指一本動かさなかった(310頁)。
・日本人が本当に知らないふりをしているのは「日本が従者として主人[アメリカ]におもねることを通じて、その没落を念じている」という事実それ自体なのである(313頁)
思わずたくさん引用してしまいましたが、これに加えて武道的身体論の気づきがたくさん書かれていて本当に教えられるところの多い本でした。
(筑摩書房2010年1600円+税)
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