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2010年12月17日 (金)

池田晶子『残酷人生論』

哲学の基本は神の存在を意識しながら存在の問題を考え抜くところにあります。著者はこの王道の真ん中を疾走していった人です。早く亡くなったのは残念ですが、まだこうして新刊が出てくるのは嬉しいことです。

「私とは何か」と問う「存在」というのは何なのか、神なのか仏なのか。それはともかく何だかえらいもののようでもあり、翻ってそれはやはり変わらぬ「私」のようでもあります。いやそれこそが「魂」というものなのか・・・と徹底して考えていく姿勢が爽快です。

だから、「疑え」という話は最後には「信じよ」という結びになりますが、考える私はさらにその先へと歩みを進めていきます。これはもう著者が死んでもなお、その魂が考え続けているという感じです。

こんなことをやったのは、かのソクラテスかプラトン以来かもしれません。すごいことです。

世の中の哲学を専門にしている研究者は「哲学研究者」にはなれても、決して哲学者ではありません。そうした哲学研究者が一番苦手としているのが自前の言葉で考えることなのです。それはもう苦手というよりほとんどできないと言ったほうが正確かもしれません。

著者の姿勢はほとんど生まれつきのように正真正銘哲学者のそれですから、小難しい論文調の文章とは無縁ですし、こちらの魂に直に語りかけてきます。いい本です。娘に読ませます。

(毎日新聞社2010年952円税別)

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