渡辺幹雄『ロールズ正義論の行方 ―その全体系の批判的考察』
著者が30歳のころに出された本です。細かく専門家向けに議論を組み立てていて、立派な研究書です。私にはこんな立派な本はかけないなあと感心させられます。ただ、一般的読者には難しい言葉遣いです。外来語が多くて大学生でもついていけないところがあります。
題名から見てもわかるようにロールズの理論体系全体を丹念に批判しています。諸大家の批判を手がかりにしながら細かく議論していますが、その結果最終的にロールズの美点がどこにあったのかがわからなくなるほどです。それはもう、ここまでくるとロールズへの愛がほとんど感じられないくらいです。
議論の仕方が研究者向けということですから仕方ありませんが、この作業を経た後、もう一度ロールズ論を一般読者に向けて書いてもらいたいところです。つまり、基本的な諸概念を自分の言葉で組み立てながら、ロールズを検討するというスタイルで、ロールズのここがすごいということを書いてもらってはじめて、一般読者としては納得できるように思います。
文体は饒舌で、若さと勢いがあっていいのですが、「~のだ」「~のである」が頻出するため、強引な論証のように見えてしまうのが難点です。それともこれは自信がないことの裏づけでしょうか。著者はきっと現時点で自分の文章を読み直してみて恥ずかしいと思っているんじゃないでしょうか。そう思わないとしたら個人的にはあんまりお友達にはなりたくないです。
わが国の学会での評価は高いと思いますが、本として公刊する以上、もう少し読者サービスもしてくれるとありがたいです。
(春秋社1998年5000円+税)
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