朱川湊人『花まんま』
久々に泣ける短編集です。私にとっては西加奈子の『さくら』以来です。特に表題作の「花まんま」はお見事です。直木賞を貰うのも当然ですね。
作者とは世代が近い上に、昭和40年代には大阪の堺市に住んでいたこともあり、本書の舞台設定はよくわかります。そういやあのころそんなんやったわ、という小道具がたくさん出てきます。今の若い読者にとってはどうなのかわかりませんが、著者が「ノスタルジック・ホラーの名手」と言われたりするのも本書で十分に納得できました。
わが国にはこんなふうに見事な物語を書ける作家というのがいる一方で、文学や演劇の研究ないし評論というのは何でまたあんなに文学的・演劇的センスがないのかと、あきれることがあります。ちゃんと作品が鑑賞できない代表選手がその輩なのですから。
その一方でヘンに理屈をこねない一般読者や観客の作品理解のレベルは全体に非常に高いとも感じます。要するにわかっている人はわかっているのです。余計なことは言わないだけの話なのかもしれません。
あ、テレビドラマの水準はダメですけど。
それにしてもこうして別世界に連れて行ってくれる作品はいいですね。カタルシスが得られます。やっぱ小説はこうでなくっちゃ。
(文春文庫2008年514円+税)
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