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2011年1月13日 (木)

田中成明『法理学講義』

本書が出版された1994年に一度読んだことがありましたが、今回論文をまとめるにあたってかなり念入りに再読しました。法理学=法哲学を勉強する人にとっては必読の教科書ですし、研究者にとっても学説史や基本文献を確認するために手放せない本だと思います。

全体に丁寧に各学説の要点を押さえ、邦語のみですが見事に基本文献が押さえられています。しかし、たんなる網羅的な本ではなく、法律の判断基準を対話的合理性に求めるという著者の主張はしっかり述べられています。

対話的合理性というのは常識・良識・社会通念といったものに基づいています。これに対する批判もないではないようですが、学者のように反対のための反対意見をひねり出すようなことをしない法律実務家ならば、おそらく納得するのではないかと思います。

精密で正確な論理展開は著者の身上ですが、今回よく読んでみて気になったところが一点ありました。193頁でルーカスの議論を紹介しながら、ルーカスのアリストテレスの理解に基づいてハイエクやフラーの議論を紹介しているところです。ルーカスのアリストテレスの理解が曲解としか言えないお粗末なものなのに、その曲解を根拠として論理を展開するのはハイエクやフラーには気の毒だなあという気がしました。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』をひもとけばすぐにわかることです。ちょっとがっかりです。

(有斐閣1994年2900円+税)

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