森末伸行『正義論概説』
同年代の法哲学者の中でも最も読みやすい文章を書く人です。近年お勤め先の大学を辞められたそうで、ご病気とかでなければいいのですが。
本書を読むのは二度目ですが、印象は変わりません。読みやすくて分かりやすい良い本です。正義論の道案内として重宝します。今月末の一般市民向けセミナーのために私自身いろいろと読み直していますが、こういう安心して読める本があると頭の中が整理されてすっきりします。
著者自身の解釈や思想は声高に自身の独自性を主張するものではなくて、よく通る声で控えめに鋭い指摘をするという感じです。本書の最後に「想像力の正義論」という節がありますが、対話的関係の中で具体的な他者の存在を意識する正義論です。
想像力は言語によって表され、そうした「言語能力の卓越性あるいは豊かさこそが、他者への『思いやり』としての想像力を基盤とする『人倫』を創り上げる力となる」(155頁)と著者は言います。
著者はきっと育ちのいい人なんでしょうね。語り口はあっさりとしてますが、提起している問題の深さと広がり具合には実にいいものがあると思います。
(中央大学出版部1999年)
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