ロバート・ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』島津格訳
ロールズの同僚で批判者の代表格の一人、というか好敵手だった人です。かなり議論が細かくてついて行くのが大変です。仮に自分が批判されたとしても、何を批判されているのかをつかむのに一苦労しそうな感じがします。ロールズの批判者って本当に様々なタイプがいるんですね。まあ、それだけのものを書いたということでしょう。
個人的にはロールズ批判の脈絡で、適正手続きについて箇所が興味深かったです。ロールズのこの部分はあまりとりあげられていないところなので、参考になります。
ノージックはリバタリアニズムの主張者の一人だそうですが、リバタリアニズムということで言えば、竹内靖雄や笠井潔の本の方がずっとわかりやすいです。ノージックが面白いのはその設例が思いっきり机上の空論というか、SF的なところです。こんな具合です。
「そこに住むべきある可能的世界を想像していただきたい。この世界は、現在生きている他の人々全員を含む必要はないし、実際に生きたことのない者達を含んでもかまわない。あなたの想像したこの世界にいるすべての理性的動物は、彼が生きるある可能的世界を想像するための、あなたと同じ権利を持つであろう。あなたの想像した世界の他の住人達は、彼らのために創出された世界に留まることを選ぶかもしれないし、それから去って自分自身の想像する世界に住むことを選ぶかもしれない・・・」(484頁)
と、退屈でしょうけれど、こんな具合です。思考実験を楽しむように見えるところは、かのサンデル教授も受け継いでいるところかもしれません。それにしても、この議論を続けられると、聞いている方はつらいでしょうね。読んでいる分には「ふーん」と多少感心しながら読み進むことはできますが、論争中の相手だったりしたら、うんざりしそうです。
これでアメリカの正義論の翻訳で出されている本は一通り読み終わりました。どれも私にとっては魅力的ではありません。こればっかりを有り難がる理由はありません。欧米人ならではの限界も見えています。このことについては先日書いた論文にも書きましたし、土曜日には市民講座で話すつもりです。
私の考えの一部は比較文化論として夏頃本になります。すでにゲラ待ちの状態です。出たら買ってやってください。私が今まで出した本の中でも最も読みやすくわかりやすい本になると思います。
(木鐸社1992年)
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