森末伸行『法哲学概説』
良書です。今時といっても1994年の本ですが、珍しくもヘーゲルやフッサールの論理を用い、マルクスの物象化論を意識しながら、しかしマルキストではない法哲学を構築しています。最近のアメリカ流正義論よりこちらのほうが個人的にはなじみ深いものがあります。
特に自由な交換を通じて不法の概念が発生し、これを社会が認め、国家が認める過程を弁証法的に描き出している手腕は見事です。なるほどこういう議論は久しぶりに新鮮な感じがします。
同著者には『法フェティシズムの陥穽』という本もありますが、タイトルの意味するところが多少飲み込めました。いずれ読んでみたいと思います。
弁証法は現象を分析する際に、上手いこと時間=歴史を組み入れられているので、社会の法則性をとらえるのに適していますが、法則性は必ずしも法ではありません。義務とか神の命令といった無意識に関わるレベルは弁証法だけでは必ずしもうまくいかないと思います。そのあたりをどのように扱うのか、あるいはあえて扱わないのかという点に興味があります。
もう少し著者の本を読んでみます。
(中央大学出版部1994年)
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