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2011年2月 7日 (月)

カント『道徳形而上学原論』篠田英雄訳

昔よくわからずに読んだことがありましたが、三批判の後に読むと理解が深まります。本書自体が『実践理性批判』のエッセンスにもなっていますので、入門書として読む方法もあるのかもしれませんが、本人が書いた順番に読む方がよくわかります。

これは『プロレゴメナ』についても言えることかもしれません。妙に入門書とかどうとか言わずに初っぱなから『純粋理性批判』に取り組むのが、結果としては書いている著者の気分と同時進行するみたいでいいのかもしれません。

『実践理性批判』がパウロの「ローマ人への手紙」にあたるとすれば、本書は『ガラテア人への手紙』といったところでしょうか。これはこれで何気なく驚くべきことが書かれていたりします。たとえば、

「意志の主観的原理には、それがあたかも普遍的自然法則として妥当するかのような格率が選択されねばならない」120頁)

とありますが、これを眺めながらいろいろと考えていると、あの繊細で真面目なロールズの言う無知の「無知のヴェール」という概念との親和性が見えてきます。また、

「我々のような存在者にとっては、行為の主観的必然性は常に「べし」であって。客観的必然性から区別されるのである」(147頁)

という表現も、ケルゼンがこの存在と当為の二元論で述べていたことにつながってきます。やはり古典はおもしろいですね。

で、まあとにかく、祈るような気持ちで神の行いに自らを近づけることで信仰告白しているような哲学です。カントの真剣なクリスチャンシンカーとしての側面が窺われる本です。『実践理性批判』より読みやすいところがいいですね。今度中央公論社の世界の名著シリーズにある佐藤全弘先生の訳でもう一度読んでみようと思います。

(岩波文庫1976年改訳版560円+税)

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