木田元『私の読書遍歴―猿飛佐助からハイデガーへ―』
著者の人生と読書遍歴がまとめられています。ほかの本と重なるところも結構ありますが、著者の人生が波乱万丈で何度読んでも面白いです。
読書についても、改めていい本を紹介してもらった感じがします。坂口安吾の「勉強記」という短編や、斉藤茂吉歌集、太宰治の滑稽小説、山田風太郎の明治小説集、メルロ=ポンティ『行動の構造』などはぜひ読んでみるつもりです。
本書ではハイデガーについての著者の正直な気持ちと考えが述べられていて、好感が持てます。とにかくハイデガーの人柄の悪さには辟易しているらしく(知人や同僚をナチスに密告したり、いくら美しかったとはいえ当時18~19歳のハンナ・アーレントと不倫したりと)「知れば知るほど、私はこの人が嫌いになる」と言います(私は特に密告は許せません。こりゃあ人間のクズでしょう)。「しかし、その著作や講義録を読むと、やはりすごいと思う。古典的テキストを読むその鋭利な読み方や、その構想の壮大さに、深く震撼されるのである」(179頁)とも。
ハイデガーの『存在と時間』を読むために猛勉強して大学に進んだ著者ですから、やはりその思い入れにはひとかたならぬところがあるのでしょう。でも、私はハイデガーにはまったく義理がないので、よい読者ではありません。坂田徳男の影響もあって、その思想についてもハイデガーには冷淡なのです。
でも、著者のエッセーは大好きです。今後も読んでいきます。
そうそう、マッハに発し、フッサールやシェーラー経由でメルロ=ポンティに行く系譜には私も感心がありますので、著者の『マッハとニーチェ―世紀転換期思想史』はぜひとも読んでおきたいと思っています。
(岩波現代文庫2010年920円+税)
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