篠沢秀夫『フランス三昧』
いい本ですね。フランスの歴史と文化がしっかり書き込まれています。歴史のごちゃごちゃしたところは面倒で覚えきれませんが、言語や文化の特徴については本当に勉強になりました。また、フランス革命からナポレオンが出てくるあたりの歴史が国民国家意識の形成に密接に関わっているということもよくわかりました。
フランス語は人工的な文語的言語だということと、その文語をマスターすることがインテリの条件だということもよくわかりました。美しいフランス語を巡る差別意識が醸成される背景には、8割のフランス人が母語や方言を捨ててあらためてフランス語を学んだという国民的事情があるのでしょうね。
昔ある知人のフランス人の娘さん(当時6〜7才)が、東京のフランス人学校に通っていて、ベルギー人やスイス人の言葉遣いやファッションセンスを思いっきり馬鹿にしていましたが、そうした差別意識の中で実は結構窮屈に生活しているのが、パリのフランス人なのです。
著者は行き詰まった近代国民国家とその文化を解体し活性化するにはフランス人がお国訛り(パトワ)を大いに用い、ケルト的な過去の文化の良さを復活させる必要があると説いています。そして、そのことはそっくりそのまま西洋近代化しすぎた日本人にも当てはまるとも述べています。愛国心についての著書のある著者らしいまとめ方ですが、その言葉は傾聴に値します。
元気のいい文章で、読んでいてこちらも楽しくなります。「クイズダービー」では窺い知れなかった魅力にあふれています。何と言っても西洋の根本をしっかりつかんでいるところがすごいと思います。こんなに立派な人だったんですね。あらためて驚かされました。
(中公新書2002年740円+税)
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