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2011年3月11日 (金)

マーク・トウェイン『不思議な少年』中野好夫訳

著者のペシミスティックな思想が小説作品の中で元気な生命力礼賛の思想とせめぎ合っている不思議な小説でした。

『人間とは何か』のようなストレートな悲観的思想が、作中の人物造形の中で出てくると、違う感じになってくるのは、さすがに一流の小説家だからでしょう。結末のところには他人の手が加えられたということらしいですが(亀井俊介の手際のいい解説によります)、そうでなくても面白いと思ったところは次のようにサタンが語るところです。

「君たち人間ってのは、どうせ憐れなものじゃあるが、ただ一つだけ、こいつは実に強力な武器をもってるわけだよね。つまり、笑いなんだ。権力、金銭、説得、哀願、迫害ーそういったものにも、巨大な嘘に対して立ち上がり、いくらかずつでも制圧してーそうさ、何世紀も何世紀もかかって、少しずつ弱めていく力は確かにある、だが、たった一吹きで、それらを粉微塵に吹き飛ばしてしまうことのできるのは、この笑いってやつだけだな。」(218頁)

そうこなくっちゃ。さすがです。チェスタトンに通じるところがあります。いずれにしても、印象深い作品でした。

(岩波文庫1999年改版600円+税)

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