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2011年3月10日 (木)

マーク・トウェイン『人間とは何か』中野好夫訳

思いっきり悲観的な人間観が描かれている対話篇です。老人と若者の対話ですが、人間は外部からの働きかけに反応するだけの機械に過ぎない。自分の精神や物質に関する必要を満たすためだけに行動しているのだ、という老人の思想を若者が論駁できないままに話が進んで行きます。

すべては「外部」だという考えは1980年代後半の栗本愼一郎の考えみたいで、個人的には懐かしい気がしました。ハンガリーには19世紀末にピクレルという思想家がいて、同様のことを言っていました。K・ポランニーの先生です。ポランニーは否定的でしたが。

この殺伐とした考えはまず家族にショックを与えたそうで、奥さんが亡くなったあとに匿名の私家版で知人に配布したといういわく付きの本です。そうでしょうね。楽観的で欲望肯定的なアメリカ人社会では受け容れられにくいことでしょう。

それでもすべては神の栄光だという表現が出てきたりして、最後はそれほど毒々しい感じがしないのは、周囲の圧力のせいなのかどうなのか。スウィフトなんかの方が筋金入りのペシミズムだと思います。

しかし、思えば仏教なんてもっと殺伐としたことを言っているようなところもあるので、この種のペシミズムは日本人には一種の免疫ができているかもしれません。そんなんもありかな、と感じる人が結構いるような気がします。日本人畏るべし、かもです。欧米人からするといやでしょうね。

こんなことをあえて言う人は実は善良な市民であるようなところをあえて隠そうとしているのかもしれません。まあ、とにかく結構面白いので、本書とセットになっているらしい『不思議な少年』も読んでみます。

先日の講演会で聴衆の一人からトウェインを是非読んでみてくださいと勧められたのが、今回読んでみたきっかけでした。ありがたいことです。

(岩波文庫1973年410円)

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